体力別 2015 レポート

2015体力別 大会レポート
文・写真 朝岡秀樹

総評

今大会、全クラス、優勝者は、初優勝。とくにジュニア大会でトップに立っていた川下、今野、岩﨑ら10代の選手たちが、そのまま一般の部の全日本選手権初出場でファイナリストとなったことは、日本空道史に残る出来事だといえよう。セーム・シュルト以来、18年振りに大道塾以外の団体所属の全日本王者も生まれた。これらのことは、さらなる空道の普及を目指すうえで、喜ばしいことである。一方で、世界選手権直後ということで今季の試合を控えたベテラン選手勢が復帰し、10代の選手や新たな全日本王者たちに待ったを掛ける姿も、やはり、みてみたい。今秋、来年度、そして3年半後の世界へ・・・。紡がれるドラマが楽しみだ。

女子

2013全日本ジュニアU19を制し、2014世界ジュニアU19-235クラスワンマッチでも勝利を収めており、今回が一般クラスの全日本初参戦となる今野杏夏。身体指数232と海外勢にも対抗しうるフィジカルを有しながら、ジュニア出身者ならではのハイキックのキレをみせる。大型選手にありがちなフック主体の前に出る戦法でなく、距離を維持して伸びのある右ストレートをヒットさせるスタイルもまた、将来に向け、期待を抱かせた。東海大柔道部出身の大谷美結の投げを封じ、決勝へ。

対抗ブロック準決勝では、今野と同じく昨年までジュニアで全日本、世界を制してきた大倉萌と、2011年全日本優勝の神山喜未が、めまぐるしい動きの攻防を展開。本戦2-1、延長3-2と、旗の割れる激戦で、神山が大倉を振り切る。

決勝では、今野が、本戦右ストレートで、延長右フックで、それぞれ効果を奪い、全日本初出場初優勝の快挙を達成。ただし、今回、今野は、大谷の投げ技を避けるために場外際での闘いを選んでいる。打撃でも投げでも寝技でもフィジカルの強さを発揮する海外勢には、その戦略は通用しないだろう。今後、庄子亜久里(出産のため休養中)らベテラン勢、大倉らジュニア出身勢、大谷ら他競技からの転向組の間でもまれるなかで、全局面真っ向勝負できるだけの能力を身につけ、4年後を迎えて欲しい。

決勝。神山vs今野

今野vs大谷。効果を奪った今野の左ストレート。

大倉vs神山

-230

1回戦は右ストレートで効果4、2回戦は2010年-全日本-230クラスファイナリストの近田充から一本(連続攻撃)、準決勝は2006年全日本-230クラスファイナリストの渡部和暁から本戦で旗5本、決勝は田中正明からニーインベリーからのキメ、左ハイ、パンチ連打でそれぞれ効果を奪い、圧勝のかたちで全日本初優勝を決めた目黒雄太。今大会、目黒以外の世界選手権出場者はみな欠場したため、今後、中村知大、谷井翔太らとどのようなデッドヒートを展開するか、楽しみだ。

なお、東北の雄・阿部宏信とのパンチ合戦を本戦5-0で制すアップセットを演じ、決勝に駒を進めた田中正明は、九産大ボクシング部出身で、全日本社会人選手権3位などのキャリアを経て、36歳でボクシングから空道へ転向した42歳。柔道、レスリング、空手、ボクシング、柔術・・・様々な格闘競技を極めた者が、その技術を活かして、30代で競技をはじめ、40代にして全日本の戦線に立ちうることも、また空道の魅力といえよう。

決勝。目黒は左上段回し蹴りで効果を奪う。

準決勝。田中vs阿部

-240

前半ブロックでは、昨年までU19のカテゴリーに出場していた川下義人が、2試合目で2006年全日本-240クラス優勝の小野亮を延長4-1で下し、準決勝では、関東地区予選を制した服部晶洸から右ストレートで効果を奪い、本戦5-0勝利。

後半ブロックでは、評価高かったムエタイスタイルの新鋭、國枝厚志が初戦で小野竜治に効果(左ストレート)を奪われ、惜敗。2000年全日本-250クラス優勝の能登谷佳樹は、巻礼史との対戦で脛骨を骨折し、担架に乗る。準決勝では、小野を下した柳川慶夫が右ストレートで効果を奪えば、能登谷を下した巻が左ストレートで有効を奪い返す接戦。巻が決勝進出を決めた。

決勝は、本戦で川下が左ハイによる効果を奪うも、自動延長に突入、延長戦でも副主審・副審が引き分けの判断を下し、再延長へ。ここで、巻が、飛びつきクロスガード→腕十字の奇襲技を仕掛け、あわやという場面をつくるが、惜しくも場外に身体が出て「待て」。タイムアップと同時に、川下の優勝が決まった。18歳での全日本優勝は、男子では1992年の武山卓己(-250クラス)以来、23年振りかと思われる。大道塾日進支部の最優秀チーム賞受賞も、この川下の進撃があってこそのものだ。

決勝。巻の飛びつきクロスガード→マットに着地してからの腕十字(立ち姿勢での関節技ではない)。

決勝。

決勝。川下の回し蹴り。

能登谷vs巻

小野vs川下

川下vs服部

-250

決勝に進出したのは、藤田隆と加藤智亮。藤田は昨年の世界選手権日本代表の深澤元貴を延長戦の末に5-0で撃破。加藤は西日本地区予選優勝の杉浦宗憲から左ストレートで有効を奪取。

決勝では、まず先に加藤が左ストレートで効果を奪い、本戦終盤、藤田が右ストレートで効果を奪い返し、延長へ。延長では、加藤の攻撃の出鼻を挫く藤田の右ストレートが次々と決まり、たちまち効果3。勝負あったかと思われたところ、場外際で、加藤が組んでの左膝を一閃。レバーを打ち抜かれた藤田が悶絶し、大逆転の一本となった。

加藤は誠真会館東伏見道場所属、プロキックボクサーとしてキャリアを積む選手だが、実兄は大道塾吉祥寺支部所属、2014年全日本-260クラス優勝の加藤和徳。道着を持っての投げ技の攻防、寝技の攻防において、空道専門の選手と遜色ない技量を発揮していた点からみて、おそらく兄弟間でも稽古を積んでいるのであろう。一方の藤田は、空道のキャリアを12年持ちながら、近年、自衛隊に入隊し、空道と並行して日本拳法の稽古も積んでいた。決勝で決めた4本のカウンター右ストレートは、その経験を活かしたものだという。

決勝。一本を奪った加藤の左膝蹴り。

杉浦vs加藤。杉浦もテンカオをヒットさせるなど、テクニシャンぶりを発揮した。

杉浦vs加藤。

藤田vs深澤。裏投げ気味にテイクダウンを奪う深澤。

-260

前半リーグでは、昨年、世界選手権日本代表最終選考プレーオフで敗れて代表落ちした伊藤新太と、勝って日本代表入りした山田壮が、リーグ決勝で対戦。プレッシャーを掛け続けた山田が本戦5-0で返り討ちを果たした。

後半リーグ決勝では、加藤和徳と渡部秀一が3度目の対戦。一昨年の全日本では、渡部が絞め技で一本勝ち、昨年は加藤が打撃でポイントの山を築いて勝利している因縁のカード。渡部が前へ前へと出て、あえて打撃戦に応じる気魄をみせるが、加藤は左ボディアッパーを織り交ぜ、上下に散らしたコンビネーションで的確に渡部の身体を蝕み、本戦5-0で決着をつけた。

決勝では、山田が左ハイキックで効果を奪い、延長戦での加藤の猛攻をフラフラになりながら凌ぎ切り、号泣の初V。ここ数年、この階級のトップコンテンダーと認められながら、一度も決勝の舞台に立つことのなかった山田は、極真空手、合気道を経て、21歳で大道塾関西本部に入門し、12年の空道歴をもつ。更なる今後の活躍に期待したい。

決勝。効果を奪った山田の左ハイ。

準決勝。渡部(左)vs加藤

山田vs伊藤

山田vs伊藤

260+

前半リーグでは、特例として17歳にして出場を許可された185㎝、95㎏の岩﨑大河が、初戦・奈良朋弥戦で右ストレート、左ストレート、右ヒザでそれぞれ効果、2試合目・岡裕次戦で右ストレート、頭突き、左下段蹴りでそれぞれ効果、連打で有効を奪う。この記録をみても分かる通り、右も左も、下段でも上段でも、足でも拳でも頭でもポイントを奪えるだけの器用さを持った重量級の逸材である。リーグ決勝では、本戦・延長とも旗の割れる接戦の末、昨年の世界選手権代表、辻野浩平をも下し、決勝へ。

後半リーグは、野村幸汰が、1戦目前田聡戦は腕絡み、2戦目洞口周一朗戦は腕十字、リーグ決勝松永卓也戦は再び腕絡み・・・と全試合一本勝ちで圧巻の決勝進出。昨年、今年と柔道全日本選手権に出場し続けているだけの組み技の能力をみせつけたが、右ローで有効を奪うなど、打撃にも長足の進歩をうかがわせた。

結局、右拳骨折の疑いがあり、岩﨑が決勝を棄権したため、不戦勝により野村の初優勝、北斗旗(最優秀勝利者賞)獲得が決定。「無差別全日本優勝、4年後の世界選手権優勝を目指します」という野村と、今回は対戦を逃した岩﨑、無着衣の総合格闘技(MMA)で試合を積んだ後に空道戦線に復帰する加藤久輝、そして、今回は接戦の末に岩﨑に敗れた辻野らがどんな闘いを重ね、4年後を迎えるのか?おおいに期待したい。

野村の豪快な内股。

野村vs前田。野村が右ローでダウンを奪う。

辻野(左)vs岩﨑

奈良vs岩﨑(右)