2014 アジアカップ in ウラジオストック
小川英樹
10数年ぶりのウラジオストック遠征。前回は選手としてでしたが、今回は審判兼コーチとして同行しました。
あらゆるものが変化・進化しており、嬉しくも羨ましくも感じました。
審判として
審判の立場から見た今大会の感想は、勝てる選手はまず、ルールを熟知していること。“勝つため”“相手を倒すため”“ポイントを取るため”確実にきっちりと自分の仕事をこなします。そして膠着状態が続いたり、先に相手にポイントを取られたりしたならば、覚悟を決め、思い切りの戦法に打って出る。自分が勝つために、冷静かつ貪欲に、非情に徹して勝ちをもぎ取ります。
ここが、今回上位を占めたロシア勢の強さ・怖さといえるでしょう。けっしてパワーだけで突っ込んでくる荒くれ者たちではありません。
あと、驚いたというか、感心したのは、観客が空道ルールを知り尽くしている、目が肥えているということ。審判のミスジャッジには容赦なくブーイングを飛ばすものの、ロシア(ウラジオ)の絶対的エースの選手(現世界王者)が、2-3の僅差で格下の相手に惜敗した際でも、今の判定は妥当だと判断すると、一切ブーイング無し。潔く負けを認め、両者に拍手を送ります。選手一丸というより、まさに国が一丸となって空道ロシアを応援している感じがしました。
これでは日本は分が悪い・・
コーチとして
普段、大会や強化合宿などで、日本選手団と係わりのある、または指導する立場から見ると、若干辛口のコメントになるかもしれませんが、今大会の結果は、ご存知の通り“日本惨敗”というしかありません。もちろん、負けたとはいえ収穫は大きかったでしょう。しかし、世界大会の前哨戦の結果としては物足りなさ過ぎる。
常々「2位、3位がロシアでも、1位が日本なら、それで良い!」と口にしていますが、今大会の入賞が内田の3位ただ1つ・・
もちろん、選手ばかりを責めるつもりはありません。コーチ陣の読みの甘さもありました。正直、私の予想は、優勝1人、準優勝1人、3位1人でした。
各選手と話をし、今大会の敗因と今後の戦い方や稽古の方法、意識の持ち方など確認しました。さすがに日本のトップクラスの選手、飲み込みが早いというか、賢い。また強化合宿でビシビシいくので、そのつもりで。
ロシア対策
今大会を踏まえて、今後の稽古(強化合宿)における重点課題として
(1)『~してから』から『~しながら』へ
相手の攻撃を捌いてから・・かわしてから・・組んでから・・ではなく、捌きながら~、かわしながら~、組みながら~の連携技
(2)ロデオのイメージ
ほとんどの選手が口にする「あんなにパワーが凄いとは・・」何をいまさら・・これは以前より、ロシア人と対戦した者が伝えてきた真実ロシア人のパワーは想定外だと!
想定外の攻撃に、いかに立ち向かうか!冷静に対処できるか!重要なポイントです。
ロデオをイメージするとよいでしょう。あの暴れ馬、暴れ牛をどう乗りこなすのか・・“あんなの大したことない”という人はほとんどいないはず。
(3)斧対小太刀
ロシアンフックは最初からクライマックス。殺傷能力の高い斬撃がブンブン飛んできます。そこを小太刀でスパッと・・。日本人がフィジカルを鍛える意味というのは、ロシアンパワーに対して、「踏ん張る」「打ち負けない」等ではなく、一瞬の隙を狙って撃つ“瞬発力”のために・・と私は考えます。
(4)大木は折れない
ロシア人は関節技ではなかなかタップしない・・私も1994年のモスクワ大会で痛感しました。ではどうしたらよいのか・・私が90年代後半にひたすらこだわった「タップしてもしなくても、極まれば終わり」という、あの技たち・・皆さん、指を鍛えましょう。
(5)『こうきたら・・』から『させない』へ
“間合いを制する者、勝負を制する”立ち位置、スタンス、かけひき、そして演技力・・
以上、今後のロシア人対策として、重要項目を挙げてみました。あえて、解りにくい表現にしてあります。強化合宿等では、実践を交えて解り易く説明いたします。
それでは、近年稀に見る精鋭揃いの日本選手団たち、強化合宿でお会いしましょう。
ガンバレ!ニッポン!!
更新日 2014.6.30